Posted by on 2016年8月3日

賃貸住宅でもっともトラブルになりやすいものの一つが、退去時の原状回復の取り扱いです。

国土交通省は、平成10年3月に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というものをとりまとめています。その後、2度ほどの改訂を経て、現在は平成23年8月に改訂されたものが最新です。

「原状回復」とは、実は、入居時の状態に戻す、ということではないんです。

ガイドラインによると『原状回復』を賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。

キーワードは通常損耗、借り主(賃借人)の善管注意義務。

まず、通常損耗ですが、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等であり、これらの修繕費用は、賃料に含まれるものとされています。通常損耗にかかる修繕は家主に義務がある、ということになります。

一方の、善管注意義務。

民法の規定によるものですが、ガイドラインのQ&Aでは、「賃借人として社会通念上要求される程度の注意を払って賃借物を使用する義務が課されており、これを賃借人の善管注意義務といいます」と記されています。要するに、一般的な範囲で適切に使用しましょう(まとめすぎ???)、ということになります。

つまり、原状回復とは通常の使用で発生する経年変化をのぞき、借り主の住まい方、使い方のせいで余計に傷んだ部分を回復すれば良い、という理解で概ね良いと思います。

ガイドラインでは下図を示して説明しています。

スクリーンショット 2016-08-03 9.26.34

Bとその右の丸で囲まれたA(+B)の部分が賃借人の原状回復義務がある部分ということになります。

  • A  :賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生すると考えられるもの
  • B  :賃借人の住まい方、使い方次第で発生したりしなかったりすると考えられるもの(明らかに通常の使用等による結果とはいえないもの)
  • A(+ B):基本的には A であるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるもの

     

理屈は以上のようになりっておりますが、実際にはどれが通常損耗によるもので、どれが善管注意義務違反によるものなのか、という判断が微妙で、難しい場合が大半です。

ですのでガイドラインの16ページ以降に具体的な例を示して紹介しています。

転勤や住宅購入等により退去する予定がある方はガイドラインを入手して、どのような場合に原状回復義務が発生するか、通常損耗にあたり家賃に含まれるべきモノはどれか、それぞれしっかり確認することをお勧めします。

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