平成29年度福岡県が「空き家活用モデル事業」の成果等を紹介するパンフレット(ダウンロード7.2MB)を公開しています。
採択された6事業それぞれの活用にいたる経緯や活用状況、ポイントなどを整理しています。
空き家が住宅として流通する場合〜多くは住まい手、買い手が見つかるということ〜は、それ程問題とはなりません。
空き家を活用する、というのはその通りですが、貸したり、売ったりできるのであれば、通常の不動産流通となんら変わりはありません。
「空き家活用」などと呼んで、問題視する必要はないと思われます。
空き家が住宅として流通させることが難しいのであれば、そこで何かをしたい誰か(または事業者)に活用してもらわなければなりません。
今社会で問題視されている「空き家活用」とは、流通が難しい空き家を誰かが活用すること、と言っても良いと思います。
そこで、このパンフレットでは、「空き家」を活用したい人や事業者に「託す」ことが、いわゆる「空き家活用」の大きな柱、と位置づけています。
空き家を活用し、そこで何かをしたい人、事業者とは、どんな人か。何をしたいのか。
住まいとしてそこで生活する、というよりは、何かの事業を行いたいと考えていることが多いようです。(もちろん、空き家をリノベして、不動産流通にのせる、という事業もあります。こういった事業は、すでにみられますし、そこそこ空き家活用できると思いますが、そもそも住宅があまっているので、住まいとしての活用だけでは空き家問題は解決しません)
さて、そういった人や事業者はどこにいるのか?
実際には、手間暇かけて空き家を改修し、法的な手続きを経て事業を行おうという人や事業者はそれ程いません。だから空き家活用が進まない、というのが現実です。
でも、活用したい人はいます。
その方法の一つが行政がモデル事業や助成金といったサポートをすることで、活用したい人・事業者の背中を押すこと、だと思います。
福岡県が3年近くかけて行った「空き家活用モデル事業」は、活用したい人や事業者をあぶり出し、実際に空き家を活用して、それぞれの事業を実施した、ということが、とても、とても大きな成果だと感じます。
行政が支援しないと空き家を活用できないのであれば、お手上げです。
空き家を活用したい人や事業者は空き家活用を手段の一つであり、目的とは考えていません。
そこで何を行うか、が重要なのです。
自治体などが空き家活用を推進すること、つまり、空き家活用を目的としてしまっていることが間違っているのです。
空き家は数ある不動産の一つであり、何かの事業を行うのであれば、いろいろな条件を勘案し、多数の物件を比較し、目的に合うのであれば、事業の成否に効果があるのであれば空き家を選択するにすぎない、と思います。
なので、最も大切なのは「何かをしたい人や事業者そのもの」です。
そこに空き家があるから使う、ではなく、したいことがあるから使える、わけです。
こうなると、もはや空き家活用は、不動産施策だけではないですね。
経済振興、観光振興等々、地域活性化施策と一体に考えなければならない、と思っています。
また、事業者サイドからみると、補助金や助成金がなくても成立するような事業でないと継続的な活用は難しく、事業計画や経営手腕が問われます。
実際に空き家(一般に住宅)を何らかの事業に活用するためには、事業に関連する法律はもちろん、建築基準法や消防法など、通常よりも手間がかかる法的な手続きを得なければなりません。
事業に適うように、また法規に適合するようにリフォームすればコストも余計にかかります。
空き家(住宅)を活用する、ということはある事業を行うために、余計に手間暇をかけて、コストもかけて準備する、ということでもあるのです。
手間暇かける価値がある場合、はじめて空き家活用が可能になるのです。
建築基準法の見直しなど、空き家活用の促進に繋がるような規制緩和の動きは見られますが、現時点ではかなりハードルが高い面があります。
それでも空き家は社会資産でもあり、活用する価値がある、という視点は捨てられない、のが現状でしょうか。