Posted by on 2016年8月5日

福岡県では、敷引特約がある賃貸借契約が多く見られますが、「敷引き」について法律上の定義があるわけではありません。福岡県あたりの不動産業界の商慣習として認知されている、といった位置づけとなっています。(敷引きは京都にも多いとか)

敷引きって何?ということになりますが、敷引は「退去の際に敷金の一部を返還しない」と入居時に約束したもので、退去時に、借り主の債務の有無に係らず、精算時にその一部を償却し、返還しない取扱いをするものをいうようです。

家賃2〜3ヶ月分を敷引きとする特約が多いと思いますが、敷引額には、経年変化及び通常の使用による損耗分など、修繕費の一部も含まれ、実費精算と比べると、その分、家賃は低額に設定される傾向があるそうです。私個人は「実費精算よりも家賃が低額」という点については、???というのが実感です。

 

そこで、敷引きがいくらなら妥当か?ということが問題ということになります。

誰がどう決めたのかは知りませんが、「敷引きは家賃3.5ヶ月が上限」のように書かれているネット記事を多く見かけます。

3.5ヶ月って家賃5万円なら17.5万円ですよね。2ヶ月で10万円。決して安い額ではありません。UR都市再生機構の賃貸住宅は原状回復費用を実費で精算しますが、そんなに取られません。

昨日の記事に書いたように、通常損耗はそもそも家賃に含まれているので、借り主の過失や通常の使用を超える損耗の修繕費に充てる額なんです。

つまり、綺麗に使った人にとっては割高になりやすい、ということです。(だからといって、適当に使ったほうがお得、ということではありません。善管注意義務にのっとって、やっぱり綺麗に使うべき。)

こうやって見ていくと、退去時の原状回復費用の判断も請求も大変であり、トラブルになりやすいため、「定額」としてしまうことでお互いに手を打ちましょう、というのが、「敷引き」の役割だろうと思います。

「定額」にすることで使い放題になったり、使いすぎて高額請求を防ぐことになったり、というサービスは携帯電話や家庭のインターネット回線の使用料なんかでは一般的ですよね。

「原状回復費用を定額にしてしまうことでトラブルを未然に防ぐ(不動産事業者・オーナーも入居者も手間を省けて、面倒なことしなくて良いし〜〜)」ことが「敷引き」の意義じゃないでしょうか?

なお、原状回復にかかるトラブルは裁判になっている事例もあり、「敷引き」にも司法の判断が下されたことがあります。

どう判断されたのか。

「敷引約定は、それなりの合理性を有するものと認められるから、その金額が著しく高額であって、暴利行為にあたるなどの特段の事由がない限りは、その合意は有効である。」(最高裁判例 平成23年3月24日)

「それなりの合理性を有する」って判断なんですね。「それなりの合理性」の中身が知りたいです。

[結論]

契約時に、敷引に関する内容を十分に確認・理解することが大事です。

知っていると、知らないとでは大違い。できるだけきちんとした情報と知識を得ておきましょうね。

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